2006年11月01日

デニス・レヘイン「スコッチに涙を託して」感想

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デニス・レヘイン「スコッチに涙を託して」(角川文庫)
内容(「BOOK」データベースより)
古都ボストンに探偵事務所を構えるパトリックとアンジー。
彼らのもとに二人の上院議員から依頼が舞い込んだ。
「重要書類を盗んで失踪した掃除婦ジェンナを探してほしい」
たやすい依頼に法外な報酬。悪い予感は的中した。
辿り着いた彼女の家はもぬけの殻、そして何者かに荒らされた形跡。
書類を探しているのは議員たちだけではなかった。
街に銃声が鳴り響き、屍が積み重なる。
戦場と化したボストンのストリートを失踪する二人の前に姿を現した澱んだ真実とは―。
「探偵パトリック&アンジー」シリーズ、待望の日本上陸第一弾。

現代のボストン、ドーチェスターを舞台にしたハードボイルド。
主人公、パトリック・ケンジーは勿論、職業・探偵。
パートナー(あくまで職業上の)のアンジェラ・ジェナーロは頗るつきの美女。
二人ともツーカーに洒落た掛け合いを嗜むタフ・ガイだ。

なんかいかにもハードボイルド小説のスタイル!
と、思わせて・・・さすがレヘイン。(早川書房的にはルヘイン・・・統一してほしいなw)

パトリックは児童虐待の経験がトラウマのバツイチの男であり(うわぁ親近感)
アンジーは暴漢に引鉄を引くことも躊躇わない有能なパートナー(しかも美女)なのに、ドメスティック・バイオレンスを受け続けながら、そのロクデナシ夫と別れられないでいる
二人は幼馴染で、お互いを憎からず思っていて、危ない瞬間はあるものの、お互いのかかえる問題や、彼らが巻き込まれる事件の「澱んだ真実」のどうしようもないやるせなさが、甘い瞬間を踏み潰していく。

そう、そのやるせなさが、ね。その、どうしようもなさときたら、もう・・・
何故なら、事件の根源、それが現代アメリカの抱える病巣そのもので、とても一介の探偵風情に解決しうる問題ではないから。
人種問題、前述の児童虐待、ドメスティック・バイオレンス、そして銃、麻薬・・・
最後に近い部分での、アンジーとの問答と、パトリックの独白が、とても興味深く、やっぱりやるせない。

そして事件の「澱んだ真実」の根源はあまりに深く、だから当然、一探偵にどうにかなるわけがなく――

スコッチに涙を託して朝まで飲むしかないのだ。
そして翌朝、それでも彼らはドーチェスターで生きていく。


デビュー作でコレですか!・・・凄い。
最初から人物描写に秀でていたんですね、この方。
「シャッター・アイランド」が大戦後を舞台にしながら今日的な問題を扱うな〜と思ってたら、ソレが本領だったのですね!納得。
全巻まとめ買いして良かった!
パトリックとアンジーの関係だけをとってみても、続きが気になっておかしくなるとこでした(^_^;)
このまま続巻「闇よ、我が手を取りたまえ」に突入です。
posted by るしは at 11:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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