2006年06月01日

クレイグ・トーマス「狼殺し」感想

クレイグ・トーマスと言えば、「ファイアフォックス」でしょう。
かく言うるしはが最初に読んだ「東西冷戦モノ小説」が、まさにクレイグ・トーマスの「ファイアフォックス」でした。
確か、映画公開にあわせて出版されたソフトカバーで、表紙は映画のポスターと同じ図柄でした。パイロットスーツのイーストウッドが格好よかった〜。
(現在はソフトカバー版は絶版。早川書房から新訳文庫版が出てます)

「ファイアフォックス」も語りたい事が多い小説ですが、今回は「狼殺し」です。
wolfsbane.JPG
クレイグ・トーマス「狼殺し」(河出文庫)

るしははクレイグ・トーマス作品は、「ファイアフォックス」主人公、ミッチェル・ガントが主人公の一連のシリーズ「ファイアフォックス」「ファイアフォックス・ダウン」「ウインター・ホーク」しか読んだことがなかったので、「狼殺し」を読んで、かなり吃驚しました。
まさか、ここまで渋いエスピオナージュ小説だとは!
そして同時に、るしはが愛してやまないマレル的テイストも併せ持っていたとは!

ちょっと話がそれますが、るしはが最も敬愛する外国人作家は、デイヴィッド・マレルです。
中でも「一人だけの軍隊」「ブラック・プリンス」は、何度読み返したか知れません。
特に「一人だけの軍隊」の迫力は尋常でなく、頻繁に読むのでページがバラバラになってしまい、何度か買いなおしたほどです。
(現在5冊目です。ちなみに予備にもう1冊確保してありますw)

その「一人だけの軍隊」は、ベトナム帰還兵が排他的な地方都市でいわれのない扱いに過剰反応し、しまいには州軍を巻き込んだ闘いに発展するという内容ですが、「狼殺し」は言ってみれば、その二次大戦後版、といったところでしょうか。

かつての裏切られ拷問を受けたスパイが、その記憶を自ら封じ、一市民として暮らしていたところ、突然かつての部下に命を狙われたのをきっかけに、過去の記憶を思い出し、復讐に走る・・・という物語。

記憶が蘇ってから主人公の変貌振りが、もう凄いです。
ほとんど別人格。
そうやって完全に封印しなければ普通の生活が営めないほどの、酷い記憶だったわけですが、思い出してからの行動が徹底してます。
家族もなにも捨てて、自分の死を偽装し、復讐に邁進しますからね。

ただ、ちょっと残念なのが、同時に進行するイギリス情報部内の内通者事件。
ここらへんが「渋い」部分ですね。
いえ、その渋い部分自体、フィルビー事件を踏まえたとても面白いものなのですが、結局主人公がその黒幕の手のひらの上で踊らされてるだけだった、というのがね・・・
途中からSOEのケネス・オーブリーが主役ばりに出張ってきて(彼は「ファイアフォックス」にも登場)どっちが主役かイマイチ焦点がズレた感もありますし。

主人公は最終的に本懐を遂げるわけですが、なんだかスっとしないのは、やっぱり主人公には全ての陰謀を跳ね除けて、独力で復讐を遂げてほしかったからかな・・・ってのは、冒頭の展開からマレル的なモノを期待しすぎですかね?(^_^;)

どちらかのテイストにはっきり舵を切るか、さもなければ上手に融合するかしたら(難しいでしょうけど)良かったのにな〜。
と、いうのがるしはの感想でした。
posted by るしは at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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